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暗殺者、日用品

 今週のお題「新生活おすすめグッズ」を語らせて頂く。期待外れかもしれないが、おすすめ中のおすすめは『日用品』の他ない。弁明するつもりではないが、今まで私はイスやら掃除機やらの持論を述べてきた。そして、それらの言動について謝罪するつもりは毛頭ない。彼らもまた、生活を輝かせるアイテムに違いないからである。

 改めて言おう。日用品を侮るなかれ。彼らは我々が新生活ホヤホヤであることを熟知した上で牙を向けてくる。考えてほしい。今まで実家という衣食住が全て整ったオアシスから突然〈衣〉以外を剥がされて独立するというのだ。100歩譲って彼ら彼女らに獣を狩る知識はあるとする(溺愛され育てられた私は買い物もしたことがない程、野生に疎かった)。しかし、彼らには狩った獣を調理する術はあるのか。調理した食材を盛り付ける器はあのるか。甚だ疑問である。言うまでもないが、私にはそれらの一切が備わってなかった。

 ここで、私の新生活当初の語るも恥、聞くも恥の話を一つ口述しよう。聴きたくないものは耳栓をした後に読み進めるとよろしい。実家という城に独立宣言をした数ヶ月後、私は新たな城の前に佇んでいた。ベッドやテレビ、フライパンや冷蔵庫など新生活必需品〈初級編〉に載っていたものは揃えていた。コレらがあれば私の新生活第一歩は華々しいこと違いないと息巻いたのを覚えている。その日の夜に事件は起こったのだ。パスタを茹でたが盛り付ける皿がなく、私はフライパンから麺を啜った。風呂に入ろうと準備したところでバスタオルがない。私は閉店間近のニトリへ、〈蛍の光〉をBGMに店内を駆け巡った。トイレに行けばトイレットペーパーがない。発車間近の尻を引き締めて薬局へ向かった。挙句には、歯ブラシがない。私は2度目の薬局へ向かう。最近は薬局の深夜営業をしている所が多く、初めてその意味に気づかされた。まだまだ他にもあるが語ればキリがなく、私の心臓も持ちそうにない。

 分かっていただけただろう。新生活とは落とし穴の連続で、今まで軽視してきた日用品に落とされることほど、恐ろしいものはない。4月も半ばに差し掛かった現在であれば、新生活初心者の皆はあらかたの穴に落ち、日用品のない恐怖に怯え尽くした頃だろう。それで良い。そうして学習していくのだ。そうして学んだことは数年後には輝かしい記憶となる。私は事前準備を入念にすることを強調したいのではない。必要なのは気づいた時の行動力と発想力。つまり、『生き抜く力を備えよ』の一言なのだ。力を蓄えた私はティッシュペーパーを切らしていたことに気づく。大丈夫トイレットペーパーを使えば良いのだ。