美女とコーヒーの出てくる本を紹介します

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美女と美味しいコーヒーのある本をご紹介

今更な、北北西に曇と往け 2巻

〜天然のミネラルウォーターに羊肉。そしてコーヒー

 今更ながら、北北西に雲と往け 2巻(入江亜紀)を読んでみる。今回、実に旨そうなモノはコーヒーのみにあらず。羊肉を歯で毟り取る様子は我らに野生的な空腹を呼び起こし、冷たいミネラルウォーターで喉を濡らす様は口渇を錯覚させた。今巻はアイスランドという土地と食の魅力を詰めた旅路なのだ。

 主人公の御山慧は9月のアイスランドに親友の清(きよし)を招待する。日本での長月とは、紅葉が枝から手を離し、母体の足元に腐葉土を重ね始める季節だが、舞台は氷の名が輝く地所である。四季は愚か、『冬』と『少し暖かい冬』の二季が交互に巡る世界を思わせた。

 来氷した青年が降り立つ地は寒風が唸るも、予想に反し、白雪ではなく緑の土地が広がり、雨上がりの高原には虹のアーチが彼の訪れを歓迎していた。アイスランドには人よりも羊の数が多く、御山慧は彼らの肉も好んで食す。お手製の大量の羊肉のサンドウィッチ、冷めたコーヒーを手に、ガタガタのジムニーに彼を向かい入れた。向かう先はアイスランドの名所の数々だ。

 恐怖と美しさの入り混じった大自然の旅にも休息は大切である。ポツポツと雨の降った日、御山慧と彼の祖父、そして清は屋内で思い思いの時を過ごす。アイスランドでは、水道から冷たいミネラルウォーターや温かな温泉が流れ出す。夢のようなこの体験は、この地では、ごくごくありふれた恩恵なのだ。しかして、ここはアイスの地。やはり、飲むべきは温かなコーヒーだろう。コーヒーを入れたポットがあるが、3人でその芳しさを胃に流し込めば、すぐに空となった。

 ミネラルウォーターで入れたコーヒーならば、さぞ美味かろう。加えてここはアイスランドである。冷えた体には温かなコーヒーと暖かな家、そして気兼ねない友人を。この地は、一人では生き抜いていけないのだから。