美女とコーヒーの出てくる本を紹介します

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美女と美味しいコーヒーのある本をご紹介

音楽と景色と冒険と

 こんな経験はないだろうか。ドライブ中、ふとして「よく晴れた日の午後、アノ音楽を聴きながら、この道を走ったな」と思い出すのだ。車窓の光景と頭の中の音が一致して、懐かしい思い出のような感覚。不意にラジオから流れるアノ音は、私にとって一期一会なのだ。

 大学入学を果たし、2年が経過した頃である。私は父に一台の車をプレンゼントされた。その車は初めて、この地に足を着いてから20年が経過していた。最初は硬く、黒いアスファルトに戸惑いを覚えつつ、その4本の車輪を必死に回転させたのだろう。今ではどんな悪路も走り込めるまでに成長していた。私にとっては生まれて初めてのバディだが、彼(もしくは彼女)にとって、私は3人目の相手らしかった。

 白く小さな車体は、よく見れば所々にサビが浮き上がり、シートには毛玉が目立つ。エアコンをつければカビ臭い。加えて80キロの速度を出そうものなら「そんなに急かさないで!分解しちゃうわ」と、ガタガタと体を震わせ、私の肝を冷やした。車内前方の中央部分には空調の装置と、ラジオのチューニングや音量のつまみがポツンと鎮座するのみで、地図を持たぬ者同士のドライブは常に冒険となった。

 気ままに走り出し、途中のコンビニエンスストアでコーヒー購入する。ラジオは音楽が聴ければ何でも良い。後はどこまでも自由であった。大学生だから時間は十分にある。今まで入ったことのない路地に入ってみる。車一台がなんとか進めるほどの狭い道だ。静かな夏の午後の路地には、私たちしかいなかった。ラジオからは夏の日の木陰を思わせるようなボサノバが流れていた。きっと、この景色がなければ、流る曲に関心を向けることもないのだろう。私の一期一会はアノ曲とコノ光景が合わさって初めて感動に変わるのかもしれない。

 私は社会人になり新車に乗り換えた。小さなテレビ付きであるが、前よりも車内が静かに感じられるのはなぜか。私はバラエティー番組もカーナビも消し、ラジオをつけた。久々に冒険がしたいのだ。

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by ホンダアクセス