美女とコーヒーの出てくる本を紹介します

bookyaの本の紹介

美女と美味しいコーヒーのある本をご紹介

座らないイスを一脚

 今週のお題「新生活おすすめグッズ」を紹介させて頂く。聞きたまへ。一人暮らしを始めるものよ。部屋の内装には満足がいっているか。

 一人暮らし開始当初の私の部屋は有り体にいって貧しかった。別にお金がないとか食べ物に困るとかを言いたいのではない。ただ簡素であったのだ。テレビ、ベッド、背の低いテーブル、カーペット。これがあれば当初の我が城は再現できる。まるでオママゴトをしようにも道具が足りず、用意できた数少ない品々をシートの上に配置したかのような有様である。足りない品は想像で補うほかない。当然だが、この城に好んで来訪する勇者は現れなかった。

 ゴチャゴチャと雑多に物が溢れた部屋は好かない。しかし、シンプルがすぎて無味無臭の部屋も同様に好けなかった。そんなワガママな私はどうせシンプルであるなら、『お洒落シンプル』になることを旗に掲げ、その一歩として洒落たインテリアを探す旅に出る。「これぞ」という品と奇跡的な出会いを果たすまで我が城には戻るまいと心に誓いながら。

 結論から言うと、その出会いまでは長い道のりを要した。ある日、私は無印の加湿器に出会う。薄明るいライトのついたそれをみていると、我が城をモウモウと素敵な煙で包み、優雅にコーヒーを飲む私が想像できた。しかし、購入して配置してみるも、さほど洒落ていない。モウモウとした煙も店先でみた時より勢いがなく感じる。あの時の想像は所詮煙の中の幻想であったのだ。そのような幻想には多々出会うことがあり、その度に物悲しさに打ちのめされた。

 私が一脚のイスと出会うのは社会人になってからである。初めは読書用のイスが欲しくなり、購入することとなる。イスを部屋の窓側、陽当たりの良い場所に置くと驚いた。とても洒落ているではないか。シンプルな部屋に端整なラインを描くイスが一脚あると、そこが雑誌の中の『洒落た部屋』にみえるのだ。それはもはや、インテリアといって差し支えない。これは座らずに洒落た小モノを置いた方が見栄えするのではないか。しかし悲しいかな。私の部屋には洒落た小モノなぞ探してもみつかるはずがない。仕方がないのでティッシュを置き、鑑賞してみた。

 なんと凛々しいティッシュになったことか。


 

 読者諸君、君たちなら何を並べるか。