仮眠前の珈琲

今週のお題「お気に入りの飲み物」とは少し趣旨が異なるものをお話ししたい。『美味しい』や『特別な』飲み物を期待されているだろう方々には申し訳ない。それらを押し通してでも言いたいのは、この感動を匿名の皆様と共有したい下心のためである。感動と銘打ったが、大それたことを叫びたいのではない。そんな度胸は小指ほども持ち合わせがなく、むしろ授業中に黒板と向き合う先生の目を盗み、隣席の人にコソコソとお話ししたいような気持ちである。

 題名をみてわかる通り仮眠前に珈琲を飲むことを推奨したい。目の前に仮眠しようとする者がいるなら、マグカップに半分ほど注がれた暖かい珈琲を差し出すのもやぶさかではない。とはいえ仮眠前にカフェインを摂ると眠れないのでは？と思っている読者諸君も多いはずだ。しかし、その疑問を持つことが感動までの大きな一歩であると私は知っている。諸君らがダイヤモンドのように貴重な仮眠を前に勇気を振り絞り試された暁には存分に予想を裏切られ、小さく「おー」と感嘆の吐息を漏らす姿が想像できる程だ。珈琲を飲めば一時の安堵を手に入れ浅い眠りに沈んでいく。そして目覚るとき余韻や二度寝の誘惑に怯えることはく、まるで瞑想の後のように聡明な自分驚くのだ。

 以上のように得意げに書き綴ったが、この事実を周知の者も多いかと思うと、まさに赤っ恥である。 知らぬ者は是非、期待を胸に次の仮眠を待つと良い。知る者には深々と頭を下げてお詫びしよう。