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そして私もアイドルになる

今週のお題「アイドルをつづる」と言われても私はアイドル事情に疎い。5人以上で歌う女の子は皆AKBという大企業の一角だと思っているし、艶めかしく腰を振る彼女はKPOPと認識が変わる。そして条件がそのまま男性になればジャニーズかエグザイルであった。つまり、その手に関しては素人も同然なのだ。しかして諸君、私はアイドルを避けているのではない。むしろアイドル級の女の子は私にとって天使も同然であり、そんな彼女から告白でもされようものなら「これは死に際に見る妄想か。一般には走馬灯らしいが、どうやら私は妄想灯が駆け巡るほど女性に飢えていたらしい」と自身のモテなさを悲観するのだろう。アイドルを前に悲観し涙を流すとは私のネガティブ心も相当である。

 私はアイドル全てに臆す訳ではない。私にもしっかりと目を見て応援できるアイドルがいた。彼女は見た目もさることながら、その一挙手一投足まで愛らしい。もちろん人間である彼女は常に聖母のごとき微笑みを携え、関わる人全てに「いつも、ありがとうねー」と感謝の言葉を届けた。まさに王道ともいうべきアイドルではないか。アイドルというからには容姿だけでなく、歌唱力も必須と思われるが、その部分に関しても抜かりはない。彼女の十八番は『憧れのハワイ航路』。どうやら今から60年ほど前に歌っていたらしい。

 彼女は昭和生まれであるが、その年を知る者はいない。アイドルは永遠に年を取らないからでなく、彼女自身が年齢という概念を遠い昔に捨ててきたらしかった。彼女は既に聞いたことがある話を毎回楽しそうに語り、何かあると「飴、たべる?」とポケットを弄りつつティッシュや輪ゴムなどを床に飾った。彼女の無邪気とも言える行動一つ一つが愛らしく、どうやらその愛らしさは飾らない彼女本来の姿らしかった。

 人は他人の目を気にすることなく幼少期を過ごし、いつしか自身を着飾って周りのものに愛された。しかしてそれらの装飾は年を重ねるごとに、接着剤の効きが無くなるかのようにパリパリと剥がれていくのだ。最後には幼少の頃の自分が久方ぶりに日の目を浴びる。本来の私がどのような人柄であったか、色々なものを貼り付けた自分をいくら鏡に映しても既に見極めることはできないだろう。だが私のことである、きっと誰よりも愛らしく、清らかな心を持ったアイドルになれるはずだ。来るべきアイドル生活に向けて、私は目尻のシワを増やすことを始める。なぜなら、アイドルの第一条件は笑顔なのだから。