美女とコーヒーの出てくる本を紹介します

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美女と美味しいコーヒーのある本をご紹介

愛とアイスとクリーム

今週のお題「わたしのイチ押しアイス」。諸君、ご存知だろうか。古代、アイスはシャーベットのようなものであり『健康食品』として存在していた。そこには「私を食べなさい。健康になりたいのでしょ?」と角が立つもインテリジェンスな女性的雰囲気が漂うのだ。しかして、その冷ややかな態度に争い難いのは今も昔も変わらずである。彼女の冷たい眼差しは暑く火照った人々の体を射抜き、骨抜きにした。そんな彼女にも運命が巡る。それは彼女が渡米した先でのこと。とある訪問先で、彼女の全てを包み込む紳士が現れた。牛乳屋出身のクリーム皇子である。二人は一目で甘い恋に支配され、彼女はかつて経験したことのないフワフワとした口どけの良い心地の中で考えた。私たちのマリアージュは必然であり、そして太古から決まっていたことなのかもしれない。

 この関係は以後数百年変わることはなく、ふとすると、もともと彼女と彼は分離できぬ一つの存在であったと考えていることすらある。かくして、二人は互いに互いを引きつけあい、一つの愛を完成させた。それこそが、『アイスクリーム』である。アイスクリームは愛なのだ。

 夏、外に出る度に、細く繊細な針で肌を突くように日差しが照りつける。風はない。どんよりと重く、そして膨よかな空気が体の隅々に抱きついてくる。湿気が多いせいだろうか、まるで居心地の悪い温泉に頭まで浸かっている気さえして、息が吸いづらい。私は愛を求めて蜃気楼に足を踏み入れた。