美女とコーヒーの出てくる本を紹介します

bookyaの本の紹介

美女と美味しいコーヒーのある本をご紹介

今更な、さめない街の喫茶店

~美味しいケーキと珈琲を~

今更、さめない街の喫茶店(はしゃ)を読んでみる。昼下がりに書店へ立ち寄ると他の本とは区別されて特別に設けられたブースがみえる。そこは自動ドアをくぐった入り口に近いところに構えられているから引き寄せられるのは仕方がない。そして驚いた。漫画ではないか。『本屋大賞発表』や『フェア開催中』では文字ばかりの本が最前列に壮観と並ばれ、漫画は少し奥まったところに一大国家を築くのが常であるのに。そんなわけで私は試し読みからコンタクトを試みたわけであった。

 

 主人公−スズメはお菓子や軽食作りが得意な女の子である。そして、それらの食べ物に合わせる運命なのか、珈琲を淹れることが得意な老齢の男性−ハクロと『ラテティア』という街で小さな喫茶店を営んでいる。客はあまり来ない。

 12区に分けられたこの街はどうやら我々の世界とは少し異なるらしい。石畳の路地やそこに連なる色とりどりな家はヨーロッパの町並みを彷彿とさせる。そして、それらの家と同等の大きさのネコが我が物顔で街を闊歩しているではないか。この街の人々は夢を見ず、スズメは二人の魔法使いに気に入られた。この街の風状に疑問を抱くものはスズメを除き誰もいない。なぜなら、この街はスズメの夢の中の世界であるから。

 スズメは夢の中にいることを重々理解し、その夢が終わらないことに一抹の不安を覚える。並みの人間であれば、その恐怖に平常さを失うだろう。かく言う私も金曜日の夜ならいざ知らず、ここぞとばかりに惰眠を貪り、人には言えないスケベな夢を隅から隅まで舐め尽くすに違いない。しかし、それが平日となれば舐めている場合ではなく舌先から冷や汗を垂れ流すことになる。スズメの場合はというと、考えることをやめて刻んだチョコレートを湯煎し始めたではないか。肝が座り、実に爽快な様である。

 夢の中でスズメはドーナツやブラウニーを作りバケットに乗せる具材を手際よく調理する。毎回出来上がるものに感服するばかりだ。彼女が調理した後はハクロのコーヒーである。ドリップはもちろん、天秤式サイフォンなど様々な道具で楽しませてくれる。

 絵で見るコーヒーは我々の知っているものとは少し姿を変えて素敵な飲み物となった。お湯を入れた直後。コーヒーの粉が膨らみ、そこから湯気が立ちのぼる。それは漫画というより1つの絵画をみている様である。料理然りコーヒー然り。この本に魅了された私は彼女の夢に訪問することを夜な夜な願うのみである。f:id:bookya:20190411070730j:image