美女とコーヒーの出てくる本を紹介します

bookyaの本の紹介

美女と美味しいコーヒーのある本をご紹介

今更な、海辺のカフカ

~お昼に図書館の縁側でサンドイッチを食べ、ブラック・コーヒーを飲む。~

 今更、海辺のカフカ村上春樹)を読んでみる。村上春樹氏の作品はいくつも読めていないが、なにやらウィスキーや水、珈琲を愛飲している節がある。そして、それらを読むと喉が乾く感覚を覚える。実に美味そうなのだ。

 主人公−田村カフカ(たむらかふか)は15歳の誕生日にカラスと呼ばれる少年とともに家出をする。それは突発的な行動ではなく、入念に計画された家出だった。家出をするにあたり、彼は体を鍛え、父親の40万円を拝借し、長い時間をかけて持ちもののリストを作成した。夜行バスに乗り、おおよそ10時間かけ高松を目指す。

 高松ではビジネス・ホテルに滞在しつつ事前に調べておいた『甲村(こうむら)記念図書館』に向かう。そこは古い町並で道の両端に家々の塀がどこまでも続くようなところを進んだ先にあった。図書館には受付の大島さん、図書館の責任者である佐伯さんの二人が務めている。大島さんの15歳の家出少年を咎めるでもなく、家出先として「図書館は悪くない選択肢だ」と納得する様から彼の懐の深さがうかがえる。彼にも家出経験があったのだろうか…

 主人公のカフカはミネラル・ウォーターやミルク、ティーバックのカモミール茶を飲む。珈琲は飲まない。しかし、珈琲は彼の周りにいる大人たちが飲んでいる。ネスカフェの粉を溶かしたものだったり、ポットからマグカップに注いだものだったり。特に美味そうなのは大島さんが図書館の縁側で飲むブラック・コーヒーだ。昼食中でサンドイッチも手元にある。

 私の知っている図書館は閉鎖的である。本を囲むように壁があり、景色といってもガラス越しに見る程度だ。だからこそ縁側に驚いた。中と外の間にはガラスもないだろう。図書館という閉鎖的な場所にあることで、そこにだけ淡く弱い光が差し込んでいるような気さえする。珈琲の味も大切だが、どこで飲むかもやっぱり大切なのである。

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