美女とコーヒーの出てくる本を紹介します

bookyaの本の紹介

美女と美味しいコーヒーのある本をご紹介

今更な、神様のカルテ

~ハルの入れるイノダコーヒー~

今更、神様のカルテ夏川草介)を読んでみる。

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 カスヤナガト氏のカバーイラストの美女が好きなのです。中古で売られていたのが目に留まり、久々に読んでみるかな。と思い買いました。加えて、昔読んだこの本のコーヒーの香りが懐かしくて、また読み返したくなったのです。

 

 「なんたる失態だ……私は慨嘆した。」物語は主人公-栗原一止(くりはらいちと)の嘆きから始まります。一止は信州の病院で昼は内科医、夜は緊急医として働いている。実はこの病院、通年して医師不足に悩んでいる。そのために彼は朝から晩まで身をこにして病院を駆けずり回り、回りすぎて2〜3日は家に帰れないという多忙な生活を送るお医者様なのです。

 そんな彼の周りには大狸先生や古狐先生という敏腕の先輩医師や熊に似た同僚の外科医など、なんとも獣臭の強そうな面々が頻繁に顔を覗かせている。院内はまさに雨で濡れたときの獣のムワッとした匂いが漂うようなムセ返りそうな有様である。もし私が医師であったなら、「誠に不本意ながら…」と是非とも就職をお断りさせて頂くことだろう。

  病院の中では絶えず何者かが悶え、遠くから苦しみを我慢するかのような唸り声が聞こえてくる。一止はそれらの苦しみを止めようと日々奮闘している。一方でどんな薬を使っても不可能なことがあること。重々理解している。痛みを騙しつつ「大丈夫」と気丈に振る舞うのである。

 さまざまな色をグチャグチャと混ぜ合わせ限りなく黒に近い世界を癒すのは、なぜか真っ黒なコーヒーであった。彼の前には大量の砂糖を入れた通称『砂山ブランド』なるものや、敏腕看護師による香り高い一杯が差し出される。なんといっても久方ぶりの帰宅で会う妻、栗原榛名(くりはらはるな)の笑顔と彼女の入れるコーヒーは格別である。小説では彼女がコーヒー豆を挽くだけで、周囲がその香りに陶酔している。丁寧に、かつ力強くミルを動かし、豆が砕かれる音が部屋に響くのだ。ぜひ、仕事で疲弊しクタクタになった夕方なぞに一杯入れて頂きたいものである。